後継社長が先代のカリスマ性に依存する経営から脱却するには?

僕は3代目の後継社長ですが、後継者には初代にはない悩みがあります。
大体、初代にはカリスマ性がありそれと比較されることが多いと思います。
また、同時にワンマンな方が多いので、その不満を社員から聞かされ改革の必要性を感じている方が多いと感じています。

だから代替わりを機に指示ゼロ的な自律型組織に変えようとする方が多いのだと思います。
大きな決断だと思います。

今日は脱・カリスマ経営のための心得について考えたいと思います。

事業承継は風土改革の絶好のチャンスだが…

僕は後継社長が先代に習いカリスマ経営を目指すか、集団の知恵を活かす自律型経営を目指すか、ハッキリと選択をすることが大切だと考えています。
でも、現実的にはカリスマはなろうと思ってなれるものではないと思います。
一番、ダメなのはカリスマ性がないのに目指そうとして、でも出来ないから社員の知恵に頼るという中途半端な立ち位置です。

自分の資質を知り、それに合った経営をすることだと思います。
そして、自社が置かれている状況を考えることだと。
今は、変化が激しい上に何が正解か分からない時代、そういう時代において常に正解を示し続けることはとても難しいと思います。
例えそれが初代のカリスマ社長であったとしても…

だから、事業承継を機に自律型組織に転換するのはとても良い選択だと考えます。

例えば、ゲームの名門、任天堂の新社長、古川俊太郎氏は子どもの頃からリーダータイプではなかったそうです。
そんな人が社長に抜擢されたのには理由があります。
それは、2015年まで社長を務め、急逝した岩田聡氏のカリスマに依存しすぎたという反省です。

全然関係ない話だが、我が家にはいまだにゲームウォッチがある

アップル社のスティーブ・ジョブズは晩年に、「僕亡き後に、もしジョブズだったらどう考えるか?そういう思考はしないで欲しい」と言ったそうです。

企業のステージに合ったリーダーシップが求められるということです。

ところが、そうは分かっていても実際に引き継ぐと、人と組織にまつわる多くの悩みを抱えることになります。

その典型が先代が育てた古参社員との軋轢です。
影響力を持った古参社員により改革が阻まれるという悩みです。

過去に感謝した者だけが素晴らしい未来を創ることができる

僕が21年前に父から事業を継いだ時もそんな悩みを抱えていました。
だから「自分で採用した、都合良く使える社員が欲しい」…そう思っていました。

するち、古参社員たちは、自分たちが必要とされていないと感じ、僕に辛く当たるようになりました。
そんな中で、リーダー格の男性社員とは酒を飲み交わしながら徐々に打ち解けて行くことができた。

ある日、彼は部下にこう言いました。
「おう、お前ら、新しい社長が会社を改革するって言ってんだから、指示に従えよ」と。
一応、指示ゼロ経営なんだけどね(笑)

すごく嬉しかったのを覚えています。

この経験から、僕は後継社長が自分の組織をつくるためには、社員の中で一番影響力が強い人を味方につけることが大切だと学びました。

それを見事にやってのけた人がいます。
僕の親友、キングラン東海株式会社の原田浩史社長です。
病院で使うカーテンなどのリース販売をしている会社です。
それ以外にも「病室・居室に花を咲かせようプロジェクト」という活動をしています。

彼が社長に就任した時も反対勢力が生まれたそうです。
反対勢力の中心は他の社員に強い影響力を持った最古参でした。
社長に不満のある社員は、みんな彼のところに相談に行くほどの影響力。

そこで原田さんは、悩んだ末にある事に気づきました。
「それだけ相談を受けるということは人望が厚いということ。だったら彼に若手の教育を任せればいいんじゃないか?」

で、本当にそれをやった。
しかも任命ではなくお願いをしたのです。
「あなたには人望がある。だから若手の指導をお願いしたい」と。
これを聞いて、その社員は何を思ったでしょうか?
きっと「必要とされている、自分の価値を分かってくれている」と嬉しく思ったことでしょう。

古い社員が反対する真の理由は「自分を否定されたくない」という防衛からだと思います。
新しいことに取り組むということは過去を否定することになるからです。
でも、今があるのは過去が正しかったから…これまでを創ってきた先代と社員さんがいたお陰です。

だから、そこに感謝した上で「一緒に創っていこう」と誘うのが改革の作法だと考えるのです。

では、今日も素敵な1日を!